「ねえ。考えてみて。あなたは考えることが好き。でもね。考えてばかりでは前には進まないの。向き合う姿勢が大事」
「向き合う姿勢」
 僕は反復した。
「ほら、また考えてる。前に進みましょう」
 シルエット女性はカスタネットような歯切れの良い声音を響かせた。進め、という合図は明確であった。ナチスドイツの独裁国家は一人の独裁者によって繁栄し衰退し滅亡した。軍歌と軍靴の音は人を鼓舞するものがあった。が、滅亡した。なら、この場シルエット女性の声もそうであって欲しいと僕は願う。歩くのに疲れた。
 疲れても、僕は前に進むことを選んだ