「ここが城崎高校か…

ずいぶん大っきいんだね」

今日は受験日。高校を見た鞠奈の第一声がこれだった。

確かに、田舎の小さな学校しか知らなかった俺らからすれば、とてつもなく大きい。

「キョロキョロしてないで、早く行くぞ」

あ、さすが紫苑。すたすた歩いて行ってしまう。

「あ、紫苑。見てみろ、図書室こんなにでっかいぞ」

学校のパンフレットを紫苑に見せて、蒼太が言った。

ナイス フォロー!

鞠奈はいまだキョロキョロしている。

ふらふらどっか行って迷子になりそうだ。

「鞠奈」

ふわっと振り返ってなびいた髪の毛からいい匂いがする…

「迷子になるよ。

あと、シャンプー変えた?」

鞠奈の顔がぱああっと明るくなる。

「うん、変えた!

よく気づいたね!」

そりゃ、気づくよ。そう言いかけたところで紫苑の声が聞こえた。

「もう時間だ。そこいちゃついてないでとっとと行くぞ」

時計に目線を運ぶとたしかにやばかった。

「行こっか」

鞠奈の手をとった瞬間、他の3人が俺を睨んだことを俺は知っている。