キミに恋の残業を命ずる

しばらく迷ったあと、課長は味噌が頭にちょこんとついている方を取って、おそるおそる口に入れた。
うー、しそ味噌かぁ。お口に合うかなぁ…。


「…美味い」

「え」

「すごい美味い。なにこれ?」

「なに…って、しそ味噌ですけれど」

「シソミソ?知らねぇぞ、そんなの…」


とぼやくように言いながら、淹れたてのお茶をずずと一口。そしてまたがぶり。


へぇ…しそ味噌知らないんだ。

たしかに若者向けの具材じゃないだろうけど、ちょっとびっくり。

お総菜とかあんまり食べない人なのかな。それかすごい都会っ子とか。



「実家のおばあちゃんの味なんです。気に入っていただけるなんて意外です。けっこう渋好みなんですね」

「渋…うるさいな…」


あ、赤くなった。

これも意外で…なんかうれしい。


「この具材って、キミが作ったの?」

「あ、はい、一応…」

「キミ、ダメ社員だけど料理は上手なんだね」


ダメ社員は余計だけど…でも、味を褒められるのは素直にうれしい。

だって、なにをやってもドジなわたしが唯一まともにこなせることと言ったら、お料理しかないんだもの。

まぁ、働きづめのお母さんに代わってみっちり仕込んでくれたのはおばあちゃんだから、ちょっとお年寄り好みの味付けだったりするんだけど…。