「大学に通ってひとり暮らしを始めて自分で作るのを覚えようとしたけれど、食べてきた物がそれだから「買った味と変わんないな、むしろ買った方が安くて美味いかも」と思ってやめてしまった。まぁ作りに来てくれる人は選ぶほどいたけれどね、キミのような味を作ってくれる人はいなかった」
まだお酒が残っているのか、今の課長はすこし冗長だ。
過去を明かしてくれるのは素直にうれしいけど、でもちょっとつらい。
だって、その話をするときの課長は、すこし寂しげな表情をするから。
「俺の父は大学生のときにアメリカ留学した際に母と出会った。そして俺が生まれた。父は母と俺を連れて日本で結婚して就職活動を始めたんだけど、その経歴があだとなってなかなか就職先が見つからなかった。そんな時、とある社長令嬢に見初められてね。就職と将来の社長の座を条件に、母と俺を捨てるよう言われた。結局、俺と母への経済的援助だけは認めてもらうのを条件に、父はその契約をのんだ」
「…そんな…」
「ちなみに『遊佐』っていうのは父が婿入りする前の姓。
経済的に困ることはなかったけど、アメリカに戻った母は最悪だったろうな。外国人の子を産んで裏切られて、戻れば後ろ指さされて。結局、最期まで不幸な人で、ある日交通事故に遭ってあっけなく死んでしまった。もとより身体が弱くて薬を飲んでいたんだけど、その時は過剰摂取だったらしい。事故か自殺だったかは…まだ俺も幼かったからよく覚えていない。
そんなこんなで、残された俺は晴れて日本へ来たわけだけど、父とは一緒に住めなかったから施設に預けられたんだ」
「…そう、だったんですね…」
やっとこの一言を言うのが精一杯だった。
正直、ここまでの生い立ちだとは思わなくて衝撃を受けていた。
まだお酒が残っているのか、今の課長はすこし冗長だ。
過去を明かしてくれるのは素直にうれしいけど、でもちょっとつらい。
だって、その話をするときの課長は、すこし寂しげな表情をするから。
「俺の父は大学生のときにアメリカ留学した際に母と出会った。そして俺が生まれた。父は母と俺を連れて日本で結婚して就職活動を始めたんだけど、その経歴があだとなってなかなか就職先が見つからなかった。そんな時、とある社長令嬢に見初められてね。就職と将来の社長の座を条件に、母と俺を捨てるよう言われた。結局、俺と母への経済的援助だけは認めてもらうのを条件に、父はその契約をのんだ」
「…そんな…」
「ちなみに『遊佐』っていうのは父が婿入りする前の姓。
経済的に困ることはなかったけど、アメリカに戻った母は最悪だったろうな。外国人の子を産んで裏切られて、戻れば後ろ指さされて。結局、最期まで不幸な人で、ある日交通事故に遭ってあっけなく死んでしまった。もとより身体が弱くて薬を飲んでいたんだけど、その時は過剰摂取だったらしい。事故か自殺だったかは…まだ俺も幼かったからよく覚えていない。
そんなこんなで、残された俺は晴れて日本へ来たわけだけど、父とは一緒に住めなかったから施設に預けられたんだ」
「…そう、だったんですね…」
やっとこの一言を言うのが精一杯だった。
正直、ここまでの生い立ちだとは思わなくて衝撃を受けていた。



