通って半年が経った時だった。
彼が初めて話しかけてくれた。
「ねえ。君。」
ファンの子達は普通、ライブ終わった後
気軽に話しかけて、近況報告したり
写真撮ったりしている。
距離感が無い。
それが、ライブハウスの良いところだ。
だけど、わたしは。
いつもいつも話しかけられなくて。
彼は、誰が見てもカッコ良いっていうような
顔立ちに、立ち居振る舞い。
当然女の子のファンにいつも、囲まれてた。
そんな姿を横目に、わたしはいつも
ライブが終わるとすぐに、ライブハウスを
出た。それで、十分だった。
距離なんて、気にしてなかった。
なのに、君がわたしを呼び止めるから。
「………え?わたし?…ですか?」
胸の高鳴りが、止められない。
声が震える。
