彼は頭を撫でて満足したのか手を離し、ソファに座り直しながら今の状況を説明してくれた。

要約するとこうだ。

彼は彼自身の未来を変えようとしている。
悪魔、というだけで他の生命(一部を除く)から攻撃を受けているらしい。
「先祖様はハチャメチャやってたから仕方ないかもね」だとか。
さっき、私が助けた場面がなければ彼は出血多量で衰弱死していた、という。
そこで、良い物件である私を見つけ、地球ではない、21世紀ではない、別の世界(トイフェルのいる世界)に連れてきた、と。

パラレルワールドか何かと思うことにした。

ちなみに契約内容は、生命の共有化という代償を支払い、私を能力持ちにすること。
つまりは私も確実に人間ではなくなったということだ。

「その時は都合のいい女だったけど、今は違う。一目惚れだよ。ルナの魂は人間とは違って欲深くない、品がある。それに綺麗な黒だからね」
と、説明の最後に付け加えた。


「私はこれから何をすればいいの?」

一番気になっていたことを、説明の後に聞いてみる。

「僕はね、この汚れた世界を色々な人種で賑わい、活気にあふれた世界に作り変えたいんだ。その手伝いをして欲しい。」

彼の口からその言葉を聞いた時、正直かなり驚いた。

悪魔、と聞くと世界征服やら奴隷宗教やら…とにかく末恐ろしいことを考えているのかと思っていたからだ。

勝手に決めつけるのは私の悪い癖だ。

「あと…その…」

「?」

彼は初めて私から視線を外して言った。


「何百年もこの屋敷に僕以外居なかったから、その、一緒に居てもらいたいな…なんて…」


契約を交わしたことで逃げることは出来ないというのに彼は心配そうに再度確認を要求する。

「今更じゃない」

可愛いと思ってしまったのはきっと気のせいだ。