いけすかない笑顔だった少年の顔が少し真面目になった。

「今、僕のもといた世界では僕は死にそうなんだ。今にも、ね。
でも今死ぬわけにはいかないんだ。
だから僕は君と契約を交わす。そうすることでその現状を打破できる。
だが、君は僕から永遠に離れることは出来ず、そして色々な責任を負わせ、君を危険な目にあわせてしまうことになるだろう。
その報酬に僕は永遠に君を愛し続ける。」

対価があまりにも不平等すぎると思ったが、私が彼から離れられないように、彼も私から離れられない。
同じようなものか。と思い至った。

それに、彼が先程から口にする「私を愛している」という言葉。
何故だか体に馴染んで、とても心地よいことに気づく。

悪くないかな、と思った。
どうせ利用させられるのだろうから。


「分かった。貴方の要望を聞き入れることにする。」

「話が早い子は好きだよ。さぁ、こちらに。」

私が契約の話を承諾すると、彼はまたにこっと笑って、自分を手招きした。

契約、というのが始まるのだろう。

私は彼に近づき彼の手をとった、


瞬間、 

私は彼の膝の上に乗せられ、抱きしめられた。


状況がつかめない。
人間、本当に驚いた時はなにもできないのだなと冷静に考える自分がいた。

彼が私の耳元で囁いた。

「やっと手に入れた。僕のお姫様。好き、大好きです…」

豹変した彼の態度に思わず頬が熱を持った。
み、耳はやめてほしい…

そして彼は息をするように私の顔を両手で包み込むようにして上に向かせ、口づけをした。