嘘をつかない、か。 「むずかしいね」 「え?」 「俺にはそれが、一番難しいかもね」 素直、なんて俺には無縁の言葉だし。 取り繕って、嘘の笑顔を張り付けて、人当たりよくして。 そうやって作り上げてきたのが、俺だから。 「どうしてこうなっちゃったかな」 今更、後悔なんてないけど。 「亜子」 亜子ちゃんを呼ぶ声は、音玖のもので。 よりを戻してからは、音玖は亜子ちゃんの事をちゃんと名前で呼ぶようになった。 それは音玖が、前を向こうとしている、変わろうとしている証のようなもので。