「ふふっ」



女なんて、ちょろい。
ちょっと優しくして、甘い言葉を囁けば簡単にコロッといくんだから。


“好き”なんて一言も言っていないのに。
“付き合おう”って言葉も、のらりくらりと簡単にかわせる。



簡単に手に入るものなんて、欲しくない。




俺、相当ひねくれてる。
そんなの、自覚ずみだっつの。




「あ!」




目の前を通り過ぎ階段を降りていこうとする見知った姿。
俺は身体を起こし、先輩を押しのけると立ち上がる。



「ちょっと、たかぁ?」

「ごめん、先輩。またね」




先輩に笑いかけると階段を駆け下りた。