求めてしまえば。 大切なものを持ってしまえば。 失うことを考えてしまう。 失くした時の、絶望をもう味わうのは嫌だ。 それは、俺が弱いからだろうか。 「本当に、よかったのか。これで」 隆弘に、そう聞かれるのは何度目だろうか。 隆弘なりに、俺を心配してくれているのだろう。 半分以上、彼女を気にしてのことだと思うが。 俺が別れを告げた後、隆弘が彼女のところにいったのは知ってる。 あの時の、亜子の顔は、正直もう思い出したくない。