そんな事、俺の知ったところではないけれど。
手を洗って、逃げるように部屋に向かう。


必要最低限のものが揃えられた自分の部屋。
ほとんど物のないその部屋は、いつ入ってもどこか他人の家のように思えた。

鞄をほおり、椅子にドカッと座る。


そして、長いため息。




早く大人になって。
早くお金をためて。



ここから出て行くんだ。



早く一人になって。




細々と、生きていけたらそれでいい。
なにも、望まない。




「弟って、」



いつの間に入って来たのか、突然声がした。
驚いて振り返ると不機嫌そうな顔の秋人が立っている。