「、、、誰?」

平穏なはずだった入学式の朝。

私は硬直していた。
だって、目の前にいる幼なじみが全くの別人になっているのだから。
「俺だよ、俺」
俺、俺って、オレオレ詐欺か!
なんで分かってくれないのって顔されても、だって全然違う人じゃん!
本当に信じられない。
こんなイケメンが綾人だなんて。
ワックスで整えられた髪の毛に、
長身の背、
少し着崩した制服。
、、、誰もの理想のイケメンじゃないですか。
もしかしたらまだ目が覚めていないのかもと、
目をパチパチさせたり、一回転してみたりしても、
やっぱり目の前にいる彼はかわらない。
「、、、自己紹介をしてください。」
疑いの眼差しで綾人を見ると
めんどくせ〜とでも言うようにポケットに手を突っ込んで自己紹介を始めた。
「橘綾人、今日から高校生になります。
優羽とは幼なじみでー、好きな食べ物はオムライス、嫌いな食べ物はトマトです」
だるそうな口調だけど。
、、、あってる。
やっぱり綾人だ、、、。
頭がついていかないよ。
どんどん私の顔が難しい顔になっていくのが自分でもわかった。
きっと綾人も察した。
「なんでそんな疑ってるんだよ 」
「っ」
ぐいっと顔を近づけられ、耳元で囁いた。
近い顔と低い声に不覚にもドキっとしてしまう。
「なんでって、、、」
顔近いし、バカ。
だって綾人は、中学の時はメガネで、ちょっともっさりしてて、なんかあかぬけない、
どっちかというと地味な人だったのに。
元はこんなにイケメンだったの?
「、、そんなかっこよくなっちゃって、、」
綾人の顔を直視できない。
下をうつむいていると、ニヤリと笑って満足そうに、
「なに?俺がかっこいいって? 」
私の顔を覗き込んでくる。
な、、、!!
小さい声で言ったつもりだったのに、綾人にはしっかり拾われてた。
しかもそんなドSなセリフをあの綾人くんが、。
この地獄耳、、!!!
「そんな事言ってないし!勘違いすんなバカ!」
「いてっ」
ばんっと綾人の肩を押し返して、早歩きで学校の方へ歩く。
「優羽ー待ってよー」
そんな甘えたって無駄!
私は怒ってるのよ!
絶対振り返らないんだから。
と思ってすぐに
私の早歩きは追いつかれ、
ぐいって腕を強く後ろに引っ張られた。
そのまま綾人に後ろから支えられる形になる。
「待てよ」
また耳元でそんな台詞。
顔が熱くなるのが自分でもわかる。
「、、、離して」
「怒んなって、すこしからかっただけだろ」
「、、、」
「、、、ごめんな?」
そんな甘い声で言われたら、、。
「、、、しょうがないな」
許しちゃうじゃん。
綾人はたちまち笑顔になって、
「ほら、行くぞ」
私の手を掴んで歩き出す。
、、、手、、。
繋がれた手はやっぱり綾人じゃないみたいで、
それに伴う私もやっぱり私じゃないみたいで、
なんだかすごく
変な感じがした。
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「わ、あの人かっこいい!」
「超イケメン!」
学校に着くと、綾人はたちまち注目の的になってた。
女の子たちがみんな綾人のこと見てる。