実際、どれぐらい遠くにあるんだろう。
飛行機で雲を通り過ぎても、ロープウェイに乗っても、今ひとつその高さって頭にすとんと入らない。
これぐらい、これぐらい……。
そんな当て推量で、世の中は過ぎていってしまうんだね。

そんな適当で時間が経っていくのって、こわい。
だって、納得もしていないのに、あんまりじゃない。
ごまかして、にごして……わたしはそんな不細工は、したくない。


あのぽっかり浮いている雲がどれだけ遠く、高い位置にあるのかを、わたしは絶対知ってみせる。


うん、よし! とわたしはいきなり手をグーにして結び、空とそんな約束をしてしまったのだった。


待っててね、まず、この授業が終わってからね。


握りこぶしをほどこうとした時、今日最後の授業の終了をつげるチャイムがどこかさびしく鳴り響いた。



先生がさっさと片付けをして、

「きりーつ、れい」

室長の飯田くんが号令をかけ今日の授業は全て終わった。
のこすは、部活と放課後の友だちとの遊びの時間だ。

今日は我が剣道部は活動のない日で、こういった日は必ず数人の友人と、購買付近やグラウンドの使われていないスペースで、談笑するのが決まりだ。


置き勉、と言われる教科書を学校に置きっぱなしにする生活をしているわたしは、毎日行き帰りの荷物が少ない。


もともと、部活の用意が稽古着と袴、それに体操服、ときには竹刀などとにかくたくさんあるので、わたしと部活の親友、依未(えみ)とで開発した手段。


それが、置き勉だ。
どうやら運動部に所属する子は、結構この方法をしているらしい。
歴史の資料集や地図帳、理科の便覧などが学校に置かれたまんまの教材ベスト5に入る。
残るは音楽の教科書、技術家庭の教科書だ。