最後の意地悪。

苦しむふりしてしゃがみこみ、
机の下のリュックから取り出したのは、

小さなピンクのバラのブーケ。

駆け寄って俺の前にしゃがみ込んだ彼女の、目の前に差し出した。

「…ゴメン。やっぱりちょっと、萎れちまった」

あれ? 
彼女が固まっている。


反省。

俺、ちょっとズルかった。

“せーの”で先に彼女に出させた。

だからせめて。

今度は、俺から言わなきゃね。

男だもん。

「意地悪やってゴメン。
こないだミス、被ってくれてありがとう…。
水野サン、コレ良かったら受け取って?…水野サン?」

彼女が、泣いた。

「ご、ゴメンっ、変だよな?嫌だよな?俺みたいなのに、困るよな…」

彼女が、首を強く横に振る。

「…ち、違いま…す。
私…言えなくって…また…。
ずっと10年前の研修の…お礼。
助けてくれてありがとう」


「…それだけ?

俺、さっきのチョコレートが、
もし本命だったら…スッゲエ嬉しいんだけど」