彼女は、教室に残り、1人で何かを呟いていた。
その顔こそ見えないが、声は狂気に満ちていた。
「もう一度・・・・・・歩希くんがこっちを向いてくれれば・・・完璧なのに・・・」
「まあ、あのふたりもいい仕事してくれてるし・・・」
「このノートともお分かれかな・・・」
「ふふふ・・・これで、後は上手く終わってくれれば完璧・・・・・・ふふふ・・・」
彼女は誰もいない事を確認し、教室から出ようとした。

しかし、そうはいかなかった。
「お前、いい加減にしろよ。」
「!!??」
そう言って教室に入って来たのは上田嘉樹だった。そう、彼は唯一゛彼女゛の正体を知っているものだった。
彼女はまだ動揺しながら何とか平然を装い「何が?」と言った。
嘉樹は
「何が?じゃねえんだよ。」
と言い、彼女の前に立った。
「お前は、早苗の気持ち、考えた事あるか?無いんだろ。だから、早苗がこんなに苦しんでいるのを見ても何も思わないんだろ。お前、それだったら一生いい思いしないぜ?早苗に素直な気持ちで喋れないからな。相当心にモヤが残るぞ。まあ、俺は何も言えねえし、そこではお前と一緒だな。でも、後悔するぞ。」
嘉樹はそう言って、
「じゃあ俺は忘れ物取りきただけだから。気ィつけて帰れよ。」
と言って、帰った。

彼女はただ、呆然と嘉樹がいた場所を見つめていた。