「あの人なら、本当に困るなあ。大丈夫か?何かされなかった?」


心配そうに覗き込む社長
まだ引き寄せられているから
社長との距離がかなり近い


『だ、大丈夫です』

なんとか言えた言葉
周りの目があるとは言え
会議が終わり、車に乗るまで
社長は私から離れなかった


スマホを見れば催事の開始時間まで
あと1時間だった
間に合わない…そう思ったが
「飛ばすぞ〜」
楽しそうな声がした

社長は高速をビュンビュン飛ばした
制限速度なんて軽く超えている


『しゃ、社長っ!』


「舌噛むなよ」


全くスピードを緩めない
そのおかげもあり、
開始時間10分前に会場についた


『ありがとうございました、社長はこれからどうされますか?』


「あ?会社に戻る。夜には顔出すわ」


頑張れよ、と言って行ってしまった
なんだか疲れてしまったが
気合いを入れ直し、会場へ入る