「安西先生」
社長の声で、その人は社長を見る
「おや?神谷くんじゃないか」
こんな著名人なのに
社長の事を知っているなんて驚きだ
「お久しぶりです、安西先生の講演素晴らしかったです」
社長がそう言うと安西先生は笑っている
「君が講演を聞くなんて珍しくてね、つい目が行ってしまったよ?僕の話を聞かずに何を熱心に読んでたんだい?」
ステージからは結構距離がある
満席に近い講演だから
気がつかないと思っていたが
まさか気がついてたとは…
「ばれてました?…これ、読んでたんです」
私が渡した本を安西先生に見せた
その本を見た安西先生は一瞬、驚いた顔をしたが、すぐにこやかに笑い
「その本をどこで?」
「僕の秘書さんの愛読書なんです」
まさか言われると思わなく驚いたが
安西先生が私に視線を向けた

