「寝てないのか?」
声のする方を見れば
サングラスをかけ、前を見てハンドルを握る社長
『すみません、』
「いや、いい。まだ時間があるから寝てろ。会議中に寝られたら困る」
大事な出張なのに
私は何をしているんだ
結局、和弥に出張の話をしたのは
昨日の夜だ
言いにくくて、言えなかった
けど、こんなことなら
すぐ言えば良かったんだ
『社長…』
ん?と返事が返ってきた
けど、なぜ社長を呼んだのか
私にもわからなく、何も言えなかった
社長は何も聞いてこない
その代わり、私の頭をポンポンとしてくれた
どうしてそんなことをしてくれたのか
わからない、けど私は嬉しかった
大丈夫って言ってくれてるような気がしたから
私は下を向き、できるだけ抑えて泣いた
社長は何も言わず
流れているラジオのボリュームを
少し上げてくれた
やっぱり、社長は優しい…

