退かそうとしたが
今度は上手くいかず
社長の手は離れてくれない
ゆっくり身体を離せば
ガッチリ捕まれ、引き寄せられる
社長の心臓の音と寝息が聞こえる
今の私は…茹でタコだろう
恥ずかしさが半端ないが
社長に抱きしめられていると
安心できて、睡魔が襲ってくる
こうやって、毎日寝れたらいい…
なんて思ってしまった
人間、最悪な状況でも
それでも前へ進もうとする
その時、誰かがそばにいてくれたら
尚前へ進む勇気が持てる
「小森、行くぞー」
『はーい、ゴミ捨ててくれました?』
当たり前だ、と玄関のたたきで私を待つ社長といつものやり取りをしている
社長のマンションへお世話になって3週間
痣も殆どわからなくなり
外出を極力控えていたが
ここ数日くらいから
社長と一緒だと
どこでも出かけられるようになった
この3週間、和弥からの連絡はない

