車を路肩に停め、私を見る社長
「迷惑なら手を差し伸べない。人には幸せになる権利がある、それを彼は小森から奪ったんだ…。それとも迷惑?」
迷惑なんて…
そんなことない
自分でもどうしていいかわからず
ただ、和弥の顔色を伺いながら
毎日、毎日暮らしていた
まさか社長が、手を差し伸べてくれるなんて思ってもみなくて…
口を開けば、声を出して泣いてしまう
私は首を横に振るのが精一杯
「なら、いいよ。小森は笑っているのが一番いいから」
また頭をポンポンして
また運転を開始した
この、ポンポン……反則
こんなことされたら、泣いちゃうじゃない
社長に出会って3年
こんなに社長を近くに感じたことはなかった
だめだ…
そう思っていたら
ぼやけた視界にスッと何か入った
社長の…ハンカチが膝の上に置かれている
何も言わない社長
そのハンカチを手に取り
何も言わず目頭に抑えた