他愛ない話をしていると、

「ねえ。」

後ろから声がした。

私があわてて振り向くと

「あのさ、ちょっといい?」

声の主は、同級生の相川 遥(アイカワ ハル)水泳部のメンバーでもある。

「うん。どうしたの?」

「先生が呼んでる。」

「わかった。」

遥も小学生のときから話したりしているけど、水泳部に入ったのは意外だった。

運動は人並みくらいなのに、水泳となると、びっくりするほど速い。

「次の大会、どーするの」

「私?3種目でるよ。」

「じゃあ、3種目でる。」

「え、そんな簡単に決めていいの?」

「うん。勝つし。」

「腹立つ~!私も勝つ!」

遥はときどき自信満々なところがある。

でも、基本的には優しいから不思議とイライラはしない。

「何先生が読んでるの?」

「顧問の田中先生」

「ふーん。」

会話はあんまり続いたことがなかった。