付き合いはじめてから3週間がたっていた。

玲奈は、何も言わなかった。

遥も、いつも通りの態度だ。

それは、辛いことだけど、私が招いたことだ。

彼氏ができたわけだけど、同時に失恋した私は、腰まであった髪を肩の上まで切った。

「柳。」

武くんは部活が終わると校門で待ってくれている。

「…ごめん、遅くなって。」

彼氏が出来るように頑張ってきたはずなのに、なぜか嬉しくはない。

武くんは真剣に話してくれるのに、
私のことを考えてくれてるのに。

私は、武くんが遥だったら良いのに。

と、思ってしまうときがあった。

「柳、手…繋いでもいい?」

真っ赤な顔をした武くんは、それでも私の目を見ていた。

「……うん。」

私も武くんみたいに素直に言えたら良いのに。

「冷たっ…。柳…手袋してるんだよな?」

「……あ、ごめん。私、冷え性っていうか…離していいよ。」

「いいよ。こっちのほうが暖かいだろ?」

「……ありがと。」

武くんは、私のことを想ってくれる。

それなのに……。

どうして、遥の顔が浮かぶんだろう。

「もう3週間だな、柳。」

「……うん。」

「柳…どうして髪を切ったんだ?」

「え。」

失恋した…なんて言えない。

私は、少しの沈黙のあと、

「…気分転換だよ。」

と答えた。

「ふーん。じゃ、俺こっちだから。」

武くんは笑顔で帰っていった。

「…ごめん。」

小さくつぶやいた私の声は武くんには届かない。