柳 美都(ヤナギ ミコト) 15歳。

中学生になれば、恋愛できると思ってた。

新しい友達、はじめての部活、先輩、後輩…。

初恋もすぐにできるって。

小学生のときは出来なかった恋バナもできるって。

でも、そうじゃなかった。

1学期が終わっても、2学期、3学期になって2年になってもなかなか恋ははじまらなかった。

水泳部に入って、いい友達に恵まれて、勉強は得意とは言えなかったけど、毎日が楽しくて仕方がなかった。

「美都~!泳ぐよ~?」

「美都先輩!泳ぎ方教えてください!」

小学生のときから仲良しの藤宮玲奈(フジミヤ レイナ)と後輩の声。

後輩に、「美都先輩」と、はじめて呼ばれたときは嬉しくて仕方がなかった。

後輩の優ちゃんは、よく恋愛相談をしてくれるけど、上手く返せないから、彼氏がいる玲奈に任せてしまう。

いつか、恋愛相談もちゃんと答えられるようになりたいな。

もっと後輩に頼られるような…。

「また恋愛について悩んでんの?」

玲奈が私の顔をのぞきこみ、玲奈の長いツインテールがゆれる。

「……うん。」

私が小さくつぶやくと、

「バカらしい。恋愛なんて考えたって変わらないよ。私がアイツを好きになったのも、知らないうちに気になっちゃってたんだから。」

玲奈は大人っぽくて、いつも相談にのってくれる自慢の友達だ。

「うん。ありがと。」

「いーよ。ってかさ、気になるヤツいないの?そろそろいるでしょ?」

「わっかんないんだよねー。痛。」

玲奈が私のポニーテールをぐいっと引っ張った。

「まあ、いつか出来るよ。頑張れ」

「応援してくれるなら引っ張らないでよー。」

「そのほうが気合いはいるでしょ?」

「痛いよ。」

ときどきイタズラをしてくるのは、玲奈なりの感情表現だと最近気づいた。