大次さんは少し強いちからで後ろから私を抱き締める。

大次さんの匂いがこんな近くからする。

大人っぽい香水の匂い、どこからか微かにする煙草の香りも、私にはまだ早い気がするものばかり。

やめてよ。なんでこんなことするの?

何で名前で呼ぶの?



…でもよかった。


こんな、涙でぐちゃぐちゃな顔、見られずにすんだ。



「あたし、帰ります。」



「は?」



この人のすることは本当にわからない。

「帰らせてください。私は、大次さんの何なんですかって質問。スルーしたくせに。いまさら。」

私を抱き締める大次さんのうでの力が一瞬震える。

「好きっていったのに、スルーしたのは、だれですか?」

このまま何も喋んないで。なにも言わないで。

「大次さんは、気があるように思わせていつもはっきりしない、ずるい!」

「俺は!」

「それなのに、電話したり、追いかけてきたり、抱き締めたり、名前呼んだりずるいよ!!!」

そう、私が叫んだ途端。

ぐいっと、大次さんに腕をひかれ、向かい合うように位置を変えられる。

私の両肩をしっかりとつかみ、大次さんが私の顔をのぞく。


しかたなく、大次さんの顔をみると、かなり焦っている顔をしていたから、少しだけビックリしてしまった。

だってこんなに、余裕ない顔の大次さん初めて見た。

今にも泣きそうな大次さんに、本当に少しだけビックリしてしまった。


大次さんは、深呼吸をするといきなり喋りだした。

「俺は!昔はただの女たらしだった!」


え……?


「へ、へぇ。今もわりとそう見えるけど。」

「だまれ。今はそんな感じのムードじゃないだろっ空気読んでくれ……っ。」

「ごめん、。」

そして、ちょっとばつの悪そうな顔をして、話を続けた。