冷徹上司は大家さん!?

「ドアが閉まります。ご注意くださ……」

「わ、ちょっと待ってくださいっ!」


 私が乗り込んだ瞬間、オフィスへと向かうエレベーターのドアが即座に閉まった。

 よかった、ギリギリ間に合いそう。

 週明けの月曜日はみんな早めに出勤するから、エレベーターがロビー階になかなか戻ってこないこともしばしば。

 今日は無事乗れてよかった……なんて思いながらぼーっとしていると、


「……あの、靴、どけてくれない?」


 後ろから聞こえてきた、低音だけれど凛として涼しげな声。


「わっ、すみません、浅野課長!」


 振り返るとそこにいたのは「冷徹上司」ともっぱら噂の浅野課長だった。

 いつも通りフレームの細い眼鏡をかけて、こちらと視線を合わせることなく壁にもたれかかっている。

 どうやら私は恐れ多くも、彼の靴の上にパンプスのヒールを乗せていたらしい。慌てて足をどけると、浅野課長の高そうな革靴にヒールの跡がくっきり残っている。


「す、すみません! 足、痛めませんでしたか……?」

「大丈夫」


 そう言うとちょうど商品企画課のフロアでドアが開き、彼はこちらを振り返ることなく降りて行った。