「まあ、見せられる証拠がなければそんな嘘ついてもしょうがないし、きっとそれは事実なんでしょう。ですが……」
そこで瀬尾さんは言葉を区切り、料理を運んできたウェイターに軽く会釈した。
「ですが、お客様に不信感を与えてしまったという時点でうちの百貨店は大いに迷惑をこうむっているんです」
向き直った瀬尾さんはきっぱりとそう言った。
「もしこの噂がそちらの社内でばれただけだったら、事情を説明すれば解決すると思います。ですが、一人のお客様を失ってしまった私たち取引先は、どうなると思いますか?」
……悔しいけれど、この人が言っていることは事実だ。
これがもし麻友さんじゃなくて本当に何も知らないお客様だったら、事情なんて説明できずに不信感を抱かれたまま、関係が途切れてしまう。
私が何も言い返せないでうつむいていると、瀬尾さんは再び口を開いた。
