「どうして左手を丸めていても包丁で指を切らないんですか?」
「馬鹿、丸めてるおかげで切らなくてすむんだよ。指先を放り出してたら包丁を下ろしたときに垂直に刃が当たるだろ」
「ふーん……」
「ふーんじゃない、ふーんじゃ」
そんなやり取りをしていたら、キュウリ丸ごと1本分の細切りが見事に完成していた。
「ほら、永原もやってみろ」
「もうこのくだり飽きません? 天津飯のときも散々細切りの練習したのに」
「散々練習して、結局七夕飾りみたいな芸術作品を完成させたのは誰だったっけ?」
「……料理センスのなさは自分でもよくわかってますよ」
私は少し頬を膨らまてみせながら、キュウリと包丁を手にして調理台の前に立った。
