「ちょっと浅野課長……もし会社の人にこんなところ見られたらまずいですよ」
「大丈夫、知ってる顔がいないかちゃんとチェックしたから。それにこんなに混みあってたら、横から見ただけじゃ抱き合ってるなんてわからないだろ」
たしかに、ピークを少し外れているとはいえまだ通勤ラッシュが続くこの電車は、パーソナルスペースなどまったく確保できないくらい混んでいる。
「……もう……」
私は満足げな表情で腕の力を強めた浅野課長を見上げ、小さくため息をつきながら彼の胸に体重を預けた。
ゆっくりと目を閉じ、昨日のことを思い出す。
昨日はあの後しばらく玄関で抱き合ったまま、思いが通じた幸せを噛みしめていた
