「永原さん、お酒のおかわりいる?」
「あ、じゃあ梅酒のロックをお願いします」
お酒を飲むのなんていつぶりだろう。
仕事が忙しくて、最近は一人で晩酌する暇なんてなかったから。
でも今の私にとっては、そのほうがよかったのかもしれない。
アパートに帰ると、どうしても隣の部屋にいるであろう浅野課長のことを思い出してしまったし、仕事で忙しくしているほうが余計なことを考えずにすんで好都合だった。
そう思うと、この騒がしい店内でさえも心地よく感じてくる。
……なんて考えながら、リップを塗り直そうとポーチを開けてみると、その内ポケットにいつも入れている部屋の鍵がなくなっていることに気づいた。
