冷徹上司は大家さん!?

 バッグから資料やペンケースを取り出していると、横から覗き込んでくる顔に気がつく。


「おはよ、一花……じゃなくてギリ花!」

「もう、ギリギリなのは反省してるってば!」


 ニヤニヤしながら話しかけてきたのは同期の明菜だった。

 今日もゆるく巻いたセミロングヘアを揺らして、目鼻立ちがくっきりした顔に華やかなメイクをしている。

 商品企画課に配属されているから働くフロアは別だけど、同期の中では一番仲が良い。


「ね、今日浅野課長帰ってきたんだってね。朝礼で挨拶するみたい」


 情報通の明菜は週明けで色々と話したいことがあるのか、早口で教えてくれた。


「え? どこから帰ってきたの? ていうか、どこに行ってたの?」


 私がそう返すと陽菜は信じられない、という顔をして溜息をついた。


「ほんと一花って社内の男子に興味ないよねえ。商品企画の視察のために2か月前からパリの支社に行ってたんだよ。それで今朝帰ってきたんだって」

「へえ、すごいハードスケジュールだねえ。帰ってきた日くらい休めばいいのに」

「冷徹上司は自分にも厳しいんだよ、きっと。あ、朝礼始まる」