まあ、どんなメンバーだろうとソコソコ楽しめてしまう私なので場は盛り上がり、食事もお酒も進んでいった。赤いニットのママさんがすき焼きをお世話してくれるのはいいが、だらりとした袖口にカセットコンロが引火しそうで目が離せない。
今日初めて会った二人のおじ様は、大手不動産を仲良く二人定年退職し、今ではオールサンデー。お一人は社交ダンスを始めた宮本さん。そして、私を映画のワンシーンみたく見つめていた志賀さん。志賀さんは退職後も自分で不動産屋をしている金持ちらしい。まあ、ここにいるおじ様三人は見た目もキッチリしてるし着ているものも良さげだし、品がある。私の向かいに座る志賀さんの視線を痛いほど感じながら、時は過ぎ、すき焼きも完成したようだ。ママに引火せずに無事に。50歳中頃のママがすき焼きを取り分けると、おじ様方は大喜び。私を気に入った様子だった志賀さんは名刺まで渡している。なんだか、プチジェラシー。
宴会開始から二時間ほど経ったほどで、志賀さんが高そうな腕時計を確認するや否や
「さて。終わりましょうか」
時間はまだ9時過ぎたところ。早くないかと思いはしたが、若くもないしなと私も箸を置いた。
「一人5000円ね」
金持ちそうなのに、紅一点からも5000円徴収しようとした志賀さんだったが、わが社の先輩おじ様村田さんが
「久美ちゃんの分は俺が出してあげる」
と男気を見せたのだった。