「随分早かったな」 車の中でハンドルにもたれていた小林さんは、ドアを開けた私を意外そうに見る。 「そ、そうですか?」 まさか『入ってすぐのワゴンセール品で済ませました』と正直に言うわけにもいかず、曖昧にごまかした。彼もさっきので懲りたのか、それ以上は何も聞いてこなかった。 そのまま私たちは一旦営業所へと引き返す。お互い黙ったままの静かな車内では、降り出した小さな粒のあられがフロントガラスにパラパラと当たる音だけが聞こえた。