何も覚えていない様子の佐藤先生は、私たちに声をかけて歩いていく。
だから私もそれに合わせてついて行こうと考える。
今がここから離れるチャンスだと思うから。
「どんな手を使っても咲良を奪うから」
「そんなことはさせねぇよ」
「じゃあね、咲良に入江くん。
今は止めといてあげるけど、またすぐに来るからね」
そう言うと、私が佐藤先生について帰ろうとするよりも先に、直樹くんがそそくさと行ってしまった。
私と蒼だけがこの場に残される。
「まさか幼なじみとはな」
「蒼当たったね……」
「そんな悲しそうな顔すんなって!
ショックかもしんねぇけど。
これからどうするか具体的に考えるぞ。
敵が見えたんだ。何歩も前進しただろ」
「そうだね!
実里ちゃんのこともちゃんと知りたいし」
当面の敵は直樹くんだと分かった。
実里ちゃんのことはよく分からないけど、ちゃんと事情を聞きたい。
「絶対俺が守るから」
蒼の心強い言葉のおかげかな。
不思議と不安はなかった。