ミュージック・オブ・フローズンハウス

暫く県道を走りカーナビで「お客様」の居場所を捜したが、全然反応してくれない。電話番号から検索しても駄目だった。祐輔が言っていた、住所も電話番号も電話で話してるうちに二転三転してましたし、様子もどこか挙動不審なイメージを持ったのでもしかするとただの悪戯電話かもしれないですよ。怪しいと分かっていても寒い中、車を走らせなくてはならないのがサラリーで生活する者の定めなのだ。近くに廃墟になった映画館があると聞いていたがその廃墟さえも見当たらない。
十五分程走ると雪が降り始めた。さぁ、雪も降り始めて益々本格的な冬の到来って感じですね、外で仕事の皆さん本当にご苦労様です、運転中のみなさん安全運転お願いしますね、とラジオのDJが言ってマライアキャリーの『恋人達のクリスマス』が流れた。一月なのに何と的を外した選曲なんだろう。いい加減に寒気は治まっていたが逆に今度は汗が額に吹き出していた。そこまで暑かった訳ではなかったので今でも汗の出所は謎のままだ。俺は夢なのか実際に車を運転しているのかがひどく曖昧になっていた。