「おい、祐輔。一回勝負な、負けた奴が車のエンジンかけてくる、行くぞ、最初はぱー」
「先輩、小学生じゃないんですから…分かりましたよ行きゃいいんでしょ行きゃあ」
会社の外回り用の車の内部は祐輔のおかげで大分暖まっていたが一向に身体の震えは止まらなかった。鼻の穴の奥がつんと痛み、両手はかじかんで自由が利かない。フロントガラスの向こうの凍り付いた世界中へ二度と戻りたくない、ずっとこの安全なシェルターの中に閉じこもっていたいと心底思った。誰が好き好んでライオンの檻に自ら入るんだろうか、大袈裟に聞こえるかもしれないがその時の僕は何故かそう感じたし、やはりその予感は間違えじゃなかった。俺はもう引き返しの出来ない所まで来てしまっていたのだ。俺を取り巻く邪悪な何かが俺の周りで静かに息づいて、逃がさないように、凍り付いた街に同化して、そこらじゅうで見ている、と病的な思いが脳みそを侵食し初め、そんな思いを風邪のせいだとほぼ無理やりに自分を納得させて俺は車を走らせ始めた。
「先輩、小学生じゃないんですから…分かりましたよ行きゃいいんでしょ行きゃあ」
会社の外回り用の車の内部は祐輔のおかげで大分暖まっていたが一向に身体の震えは止まらなかった。鼻の穴の奥がつんと痛み、両手はかじかんで自由が利かない。フロントガラスの向こうの凍り付いた世界中へ二度と戻りたくない、ずっとこの安全なシェルターの中に閉じこもっていたいと心底思った。誰が好き好んでライオンの檻に自ら入るんだろうか、大袈裟に聞こえるかもしれないがその時の僕は何故かそう感じたし、やはりその予感は間違えじゃなかった。俺はもう引き返しの出来ない所まで来てしまっていたのだ。俺を取り巻く邪悪な何かが俺の周りで静かに息づいて、逃がさないように、凍り付いた街に同化して、そこらじゅうで見ている、と病的な思いが脳みそを侵食し初め、そんな思いを風邪のせいだとほぼ無理やりに自分を納得させて俺は車を走らせ始めた。
