縁側に腰を掛け、庭を眺めた。

川上弓はこの平屋の家で、この場所が一番好きだった。

縁側はいい。

夏を近く感じることができる。

静かに目を閉じて体を倒す。

仰向けになって、ただ、ボーッと時間を過ごす。

この時間が、弓にとっては至福の時間なのだ。

少しすると、足音が聞こえてきた。

1つ……いや、2つだな。

これは……修ちゃんと和弘のだ。

「ゆみちゃん!また寝てるの?」

まだ、声変わりのしてないかわいい声が弓の鼓膜を揺らした。

「ゆーみーちゃーん!」

声をかけても起きない弓に、修二は顔を近づけた。

がばり。

そんな音が聞こえてきそうなほど、弓は勢いよく修二を抱き締めた。

「修ちゃんゲット!!」

抱き締められた修二は、苦しそうに身をよじってはいたが、少し嬉しそうにも見えた。

「ゆみちゃん苦しいよ。離して」

「やーだ」

弓は修二を溺愛していた。

それはもう、自分の弟のように。

修二は弓のご近所さんだ。

一人っ子の弓にとって、自分を姉のように慕ってくれる年下の男の子は可愛くてしょうがなかった。

「おい、いつまでやってるつもりだ。昼飯食いっぱぐれるぞ」

そんな二人を見下ろすようにして立っていた、和弘が見かねて声をかけた。

和弘は弓と同い年で、所謂幼馴染みというやつだ。

「はいはい」

「はいは一回!」

「はーい。たく、和弘ほんとお母さんみたい」

「お前みたいなできの悪いの産んだ覚えはねぇ」

「私だって、あんたに産んでもらった覚えはないってーの!だいたい」

「にーちゃん、ゆみちゃん早くいこう!」

口喧嘩を始まりそうになった二人を見て、修二は二人の手をとり急かす。

こうすると、二人の口喧嘩が止まることを修二は知っていた。

案の定、二人は口喧嘩をやめ、お昼を食べるべく歩き出した。