大人の恋は波乱だらけ!?

「っで桜木、何が引っ掛かっているんだ?
何でもいいから話してみてくれ」

「……はい。
“リュウ”と“ツバサ”のオーディションに来て下さった人たち皆さん格好良い声で素敵だったんですけど……」


私は自分が考えた“リュウ”と“ツバサ”を頭に思い浮かべる。

“リュウ”に関しては今回の鍵となってくるキャラクターだ。
恋愛シュミレーションゲームの【恋した悪魔2~サヨナラの口付け~】は17歳の女の子が主人公で名前はプレイヤーの好きなものに出来る。
そして、恋に堕ちたい相手を候補から選ぶのだが“リュウ”に至っては誰を選んでも重要な役割を担っているのだ。

ある時は、主人公の良き相談相手。
ある時は、選んだ男のライバル。

そう言った様々な顔を持つ彼は、ただ単に格好良いだけの存在ではいけない気がする。


「リュウは格好良いだけじゃなくて……優しくて温かい心を持つ人なんです。
外見は怖く見えるから、声で滲み出る優しさを表現したいんですけど……。
単に優しいや格好良いだけの声じゃ……彼の良さを表現できない気がするんです」


上手く伝えられないもどかしさが私に襲いかかる。


「確かに、12番は格好良いって感じの声だが優しさはあまり伝わってはこないな……」


高梨部長は腕組みをしながら資料を見つめていた。
格好良いと優しいが共存して尚且つリュウの個性を活かさないといけない。
声優選びって本当に大変だと思う。
タメ息交じりに資料を見つめていれば誰かがボソッと呟いたのが聞こえた。


「でも、優しさを優先するとリュウの外見のクールさとマッチしなくなるのよね。
……本当に難しいわね……」


外見とマッチしなくなる。
確かにその通りだ、リュウの外見は吊り目がポイントのクールさが売りだ。
だから優しさばかりに囚われるとキャラと声に違和感が生まれてくる。


「……違和感……?」

「ん?どうした桜木?」


何かが引っ掛かりそのまま口にすれば高梨部長が私の方を見てくる。
それにつられる様に皆の視線も集まってきた。