大人の恋は波乱だらけ!?

「もっと警戒心を持て、お前は隙がありすぎる」


不機嫌な顔同様に、声までもが不機嫌そのものだった。
いつも優しい高梨部長からは想像が出来ない程だ。
少し驚きながらも高梨部長に話しかける。


「け……警戒心って……。
同じ会社の先輩ですよ……?」

「お前は馬鹿か!」

「ひっ……!」


いきなりの怒鳴り声に情けなく悲鳴じみた声を出してしまった。
そんな私を見てハッとした顔をしながら高梨部長は『悪い』と謝ってくれる。

でもなぜ高梨部長は怒っているのだろうか?
よく分からず高梨部長の言葉を待っていれば、力ない声が私の耳へと届く。


「会社の人間だろうが男だ。
だから気を付けろ」

「気を付けるって……」


何に気を付ければいいのか、高梨部長の言いたい事が分からず首を傾げる。
そうすれば呆れた様に再びタメ息をつかれた。
そんな姿でさえ絵になる高梨部長は本当に凄いと思う。
呑気に考えていれば、予想外の言葉が落とされた。


「桜木は可愛いんだから、油断してるとすぐに襲われちまうぞ」

「何言って……」

「さっきみたいな事にならない様に隙を見せるな。
いつでも俺が助けてやれるとは限らないんだからな」


子供に言い聞かす様に優しく言われ、思わず頷いてしまう。
それを見た高梨部長は満足そうに頬を緩めた。

王子様顔負けのスマイルに胸が高鳴る。


「よっし!
怒鳴って悪かったな、気分を変えて飲みなおすぞ。
今、新しいのを持ってくるからココで待っていろ」


私の返事を待つことなく、高梨部長はバーテンダーさんの元へと歩いて行ってしまった。