大人の恋は波乱だらけ!?

「今ここで止めれば、これ以上会議は長引かないし疲れる事も無いですよね」


私は自嘲じみた笑顔を浮かべる。
社員さんが疲れているのも本当の事だし、早く終わらせて帰って貰いたいという気持ちもある。


「でも……そんな妥協で生まれたゲームが誰かを幸せに出来るとは思えません。
少なくとも私は!!……自分が納得が出来る物を自信をもって世の中に出したいです」


このゲームを待っていてくれる人たちの為にも、最高のゲームを作りたい。
妥協なんてしたくない。
そう思うのは……間違いなの?
グッと奥歯を噛みしめもう1度頭を下げる。


「お願いします!
もう少しだけ時間を下さい!!」


お願いします、そう何度も何度も声に出す。
静寂が部屋を支配して、皆が息を呑む音しか聞こえてこなかった。
そんな空気を打ち破るように明るい声が会議室へと広がっていく。


「桜木、頭を上げろ」


頭を上げれば、優しい目をした高梨部長と視線が交じり合う。


「お前が言う事は間違っていない。
妥協は次の妥協を生む……だから手を抜くなんて俺は嫌だ。
皆もそうだろう?俺たちが胸を張れないゲームなんて誰が買うんだよ!!」


高梨部長の言葉に皆は頷く様に笑顔を浮かべる。
そして私に向かって『ごめんな、頑張ろう』など優しく話し掛けてくれた。
私はそれに応える様に笑顔で返事をした。


「高梨部長……」

「なに泣きそうな顔してるんだよ」


クスッと笑うと高梨部長は私の頭を撫でてくれる。
そして耳元でボソリと囁かれた。


「お前は自分を信じて突っ走れ。
どんな事があっても俺がフォローするから」

「高梨部長……」

「ほら!会議進めるぞ!」


パンパンと手を叩きながら皆に呼びかける高梨部長は凄く頼もしくて……。
私は無性に泣きたくなってしまう。


「……ありがとう……ございます……」


私の声は誰にも届かず消えていく。
高梨部長の優しさがくすっぐたくて嬉しかった。