大人の恋は波乱だらけ!?

オーデションが終わる頃には外はすっかりと暗くなっていた。
通知で合否を連絡するため、声優の皆さんにはお引き取りを願った。

今は社員で会議をしている最中だった。
順調に4人のキャラクターは決まったが、あと2人は中々決まらなかった。
その大きな理由は私が渋っているからだ。

あと決まっていないのは“リュウ”と“ツバサ”だ。
この2人に関してはどうしても私のイメージしている声が見つからなかった。


「葉月ちゃん……妥協も必要だと思うよ」

「そうだよ……!イメージしている声が一致するなんてそうそうないんだからさー」


疲れからか社員の皆の顔が段々と曇ってきていた。
それもそのはず、私と高梨部長以外の人の意見は全員一致していたから。

“リュウ”役は12番の方に
“ツバサ”役は12番の方に

偶然にも同じ番号の方が候補に挙がっていた。

2人とも声は素敵だし格好良いと思う。

だけど……。
何かが違う気がした。

その何かが私には分からなかった。


「……部長、多数決では圧倒的に答えが決まっています。
これ以上の会議は無用では……?」


1人の社員の言葉に同意をする人がチラホラと見える。
中には私の事を気にかけてくれる人もいるが、特に口を出す事はなかった。


「……桜木。
お前は今何に悩んでいるんだ?
それが分からないと何もしようがない」


高梨部長は真っ直ぐに私を見つめる。
それに答えようと口を開くが、何を話したらいいか分からなかった。

何かが違う、それは分かっているが……。
一体それは何なのだろう……。