「何なのよ……」


文句を言いながらエレベータに乗り込む。

そして、オートロックの玄関を出て振り返ればそこには高級そうなマンションが私を見下ろしていた。
このマンションを女性に買って貰うなんて……。
沸々と込み上げてくる怒りが私を支配する。

彼は間違ってはないし、悪くもない。
だけど正しいとは思わない。
彼女たちの恋心を利用するなんて私には考えられない。


「……最低よ……」


そう呟き私は歩き出す。
ココがどこか何て分からないけど、とりあえず大通りに出てタクシーを拾おう。


「……」


大股でズカズカと歩いていく。
マンションから少しずつ遠くなっているはずなのに、彼の言葉が頭から離れない。


『どんなに格好悪くても諦めんじゃねぇよ。
夢の為なら必死扱いて努力しろ。
……それが出来ないなら後悔なんかするんじゃねぇよ』


正しいか正しくないかはともかく、そんな生き方をしてきた彼を、私は……。
心の中で格好良いと思ってしまっている。

でもそれを肯定したくなくてムキになってしまう。

もう2度と会う事がないだろう新條さんの顔を思い浮かべながら
私は地面を踏みしめるのであった。