「そ……そんな事……」


震える唇は言葉を失ったみたいに虚しく閉じていた。
そんな私を蔑む様に新條さんは私を見下ろす。


「俺とお前じゃあ……社会的立場が違う。
お前は大手ゲーム会社に勤める社員で、俺はいい年でニートだ。
だけどな……」


1度言葉を区切ると新條さんは真っ直ぐな目で私を見据えた。


「俺は後悔するような生き方なんてしてねぇ。
自分がなりたいと決めた以上は意地でも小説家になってやる。
それが周りの人間を傷つけたとしてもだ」

「っ……！！」


その瞳は嘘偽りがないのがハッキリと分かるくらい綺麗だった。
私には眩しいくらいの力強さがそこにはある。
目を逸らすことが出来ずにただ彼を見つめていた。


「だけど……誰かを傷つけていい事にはならないです……」

「はっ……そう言うのをいい訳って言うんじゃねぇか？
本気で夢を叶えたいなら、ナリフリ構わず突っ走るものだろーが」


新條さんの言葉は正しかった。
今度こそ私は言葉を失った。
何を言っても、彼には敵わない。
あまりにも正論過ぎて、言い返す言葉も見つからない。

悔しくて、悔しくて……。
負け惜しみで彼を睨みつける。

いっその事、笑ってくれた方が楽だ。
そう思ったのに新條さんは笑う事なく静かに言い放った。