「確かに貴方は悪くないかもしれない。
でも……彼女じゃないなら彼女じゃないってハッキリ言ってあげてください。
優しくして期待させるような事を続けて……。
貴方の事をもっと好きになってからじゃあ、真実を知った時に彼女たちは凄く傷つくと思うから……」


知り合いでもないし、全く関係ないけど……。
哀しむと分かっているのに放っては置けなかった。


「……はっ……。
何を言い出すかと思えば説教か?」

「そんなつもりじゃあ……」


否定をしようと思えば、鋭い目つきで睨まれる。
ピクリと体を揺らせば新條さんは立ち上がり私の方へと歩いてきた。
すぐ目の前に来ると私を見下ろしながら冷たく言い放つ。


「説教できる立場か?」

「え……?」

「夢を諦めてウジウジ泣くお前に俺を説教する資格あるのかよ」


その言葉にドクンと胸が高鳴った。
実際に彼の言う通りだし、言い返すことも出来ない。

悔しくて彼を睨む。
馬鹿だ、何でこんな人の前で泣いたのよ……。
昨日の自分を恨みながらも負けじと言葉を絞り出す。


「……確かに貴方の言う通り、私にはそんな資格はありません。
だけど!私は……貴方みたいに人を騙したりはしていません!」


ハッキリと言い切れば馬鹿にしたように笑われる。
その笑い声は寝室に広がり、何故か私の胸を抉っていく。


「騙してるじゃねぇか」

「えっ……」

「夢を諦めて今の生活に満足してるって自分を騙しているじゃねぇか。
本当は諦めたくないんだろーが」


決して怒鳴り声な訳じゃない。
どっちかといえば静かな声なのに、私の心に大きく響いたのが分かった。