大人の恋は波乱だらけ！？

「……じゃ……じゃあ……あの女の人も……」


私の頭に浮かんだのは昨日、新條さんと一緒にバーにいた綺麗な女の人の顔だった。
それに初めて会った時にいた別の女の人も……。


「ああ、アイツも始まりはお前と同じ様な感じだったな。
でもお前と違うのは、俺との関係を誤解して喜んでいるって事だな」


サラリと言う彼に頭がクラクラした。
どうやら私とは歩んできた道が全く違うらしい。
これ以上ココにいるのは危険だ、そう判断した私は転がっていた鞄を掴む。


「……正直……面倒なんだよな。
生活に困らないのは嬉しいが……」


独り言の様に呟かれる言葉。
私は思った事をつい口に出してしまう。


「……生活には困らないって……」

「ああ、この家も家具も全部……ソイツ等が買ったものなんだよ。
小説家を目指してて働く時間も惜しいって言ったら金の事は心配するなって定期的に纏まった金もくれるし。
だけどその分、会って愛想振りまくのも疲れてきたし……。
いっそ結婚でもして1人に絞るか……？」


私の前でベラベラと口を開くこの男の人は一体誰？
私が知っている新條さんはどこにもいない。

あの爽やかな笑顔も、優しさも……。
全部偽りだったって訳……？


「そうやって……女性を騙す為に“いい人”を演じて……女性を利用しているんですか……？」


込み上げてくる怒りを抑える様に掌を強く握りしめる。
お願いだから否定して、その願いも虚しく新條さんは馬鹿にしたように笑みを零す。