大人の恋は波乱だらけ！？

「桜木」

「高梨部長、お帰りなさい」


数分もしないうちにバーへと戻ってきた高梨部長。
でもその顔は哀しそうだった。


「悪い、会社に戻らないといけなくなった」

「え……？今からですか……？」


高梨部長の言葉にチラリと時計を見る。
午後11時を回ろうとしている頃だった。


「ああ、なんかトラブルがあったらしくてな」

「そうなんですか……大変ですね……」


少し残念だけど仕事なら仕方がない。
哀しみが顔に出そうになるのを必死に我慢する。
帰る準備をする高梨部長を見つめながらズキンと痛む胸を押さえていれば、ふと視線がこっちに向いた。


「ああ、悪いな……。
お前ともっと一緒にいたいのに……」


哀しそうな顔をする高梨部長に自然と頬が緩んでいく。
寂しいのは私だけじゃない、そう思うだけで胸が温まっていくのが分かった。


「高梨部長……大丈夫です！
素敵な時間をありがとうございました！」

「それはこっちの台詞だ。
……行こう、送っていく」


高梨部長はそう言って笑顔を浮かべてくれる。
でもその言葉に私は素直に頷けなかった。

ココからなら会社まで歩いて10分くらいだ。
でも、私を送ってくれるとなると時間が掛かってしまう。
彼に迷惑を掛けたくない、そう思った私は小さく首を横に振った。