大人の恋は波乱だらけ！？

「何でもないですよ！」

「……桜木」


少し咎める様な声で名前が呼ばれる。
高梨部長が何かを言いかけた時……。


「高梨部長！一緒に呑みましょうよ～！」

「飲みましょう～！」


2人の女子社員が高梨部長に駆け寄ってくる。


「……」


すっと、私の頬から高梨部長の手が離れていく。
それに少し寂しさを感じるものの話が逸れた事に安心をしていた。
これ以上、小説の話はしたくなかったから。


「部長～あっちで飲みましょう！
皆待ってますから～！」

「分かった。
行くから手を離してくれ」


酔っているせいか積極的に高梨部長に絡む女の子たち。
『悪い、少し外すな』と小声で言うと高梨部長は女の子たちと一緒に行ってしまった。
遠くなる背中を見ていれば、少し胸が痛む。

やっぱりモテモテだな。
分かり切っていた事なのに、目の前でああいう事が起きると少し哀しくなってしまう。
別に高梨部長が好きという訳ではないが、憧れの存在である事は確かだ。
だから、もう少し話していたいと言う気持ちはあったのだが……。

流石にあの中に混ざる勇気はない。


私の視線の先には高梨部長がいる。
高梨部長を囲む様にウチの部署の女の子たち全員が座っていた。

その為、私と同じテーブルには男の人しかいなかった。
男の人たちはかなり酔っぱらっており、中には机に俯せている人もいる。