大人の恋は波乱だらけ!?

そんな当たり前の事を……。
私はどうして忘れていたのだろうか。

最初は消費者の為に面白い物を作りたい、そういった純粋な気持ちしかなかった。
小説だってずっとそう思って書き続けてきた。

でも、入社して社会の厳しさやプレーシャーに押しつぶされて……。
私は自分の本来の目的を見失っていたんだ……。


「……高梨部長、ありがとうございます」


忘れかけていた熱い想いが胸に広がっていく。
消費者の方が幸せになれる様なゲームを作りたい。
いや、作ってみせる。

真っ直ぐに高梨部長を見つめれば、真剣だった彼の顔がふっと緩んだ。


「いや、俺は何もしてない」

「……高梨部長……」

「桜木」

「はい」


高梨部長は私の名前を呼ぶと哀しそうに眉尻を下げた。
その表情は何を表しているのだろう。
それを読み取るように彼を見つめる。


「お前は変わらないでくれ」

「え……」

「……どんなに熱い想いを持っていても、金や愛で全ておかしくなっちまう時もあるんだよ」

「あの……どういう……」

「あの人も……社長も……あんな人じゃ無かったのにな」


哀しそうな顔に胸がズキンと痛みだす。
何だろう、高梨部長が哀しそうにしていると私まで辛くなる。