「新條さん。もう2度と……彼女を傷付けないで下さい。
もし葉月が哀しむ様な事があったら俺は貴方から彼女を奪う」

「……傷つけねぇよ。もう……手放して堪るか」

「……そうですか、なら良かった。葉月」


泣きじゃくる私の名前を呼んだ仁さん。
伸ばし掛けた手をハッとした様に止めると、そのままぎゅっと拳を作った。


「〆切守れよ」

「……はい!」


優しい貴方の笑顔。
愛してくれた熱い想い。

私は一生、忘れない。

大きく頷けば『よっし』と笑うと彼は私に背を向けた。

前に見た儚かった背中は……。
大きくて逞しい背中に変わっていた。


「……ありがとう……仁さん」


感謝の言葉を唇に刻めば、そのまま歩きながらユラユラと手を振ってくれる。
こっちを向いてくれる事は無かったけど、それも仁さんらしかった。