大人の恋は波乱だらけ！？

「そう言えば、今は小説書いていないのか？」

「え……」


高梨部長の言葉に胸がズキリと痛んだ。

入社して以来、仕事が忙しくて小説を書く時間がなかった。
小説を書きたいという気持ちはあるものの、いっぱいいっぱいで手が回らないのだ。
それが幸か不幸かは分からないが小説家になりたいという夢は忘れつつあった。

と、言うより“不可能”という現実が見えてきたのかもしれない。
私ももういい年だ。
夢を追うにも限度というものがある。

でも……。
心の中では後悔でいっぱいだった。

もし、高梨部長のスカウトを断ってでも夢を叶えるために努力をし続けていたら……。
何かが変わっていただろうか。


「桜木？
どうしたんだ？」

「え？」

「哀しそうな顔してる」


前触れなく高梨部長の手が私の頬に触れた。
哀しそうな顔？自分の表情を確認する事も出来ずに私は首を傾げた。


「何か悩みがあるのか？」


真剣な顔をする高梨部長に見つめられると目を逸らせなくなる。
格好良いという事もあるが、本気で心配してくれているという事が伝わってくるからだ。

上司に心配を掛けるなんて社会人失格だ。