大人の恋は波乱だらけ！？

「皆！！聞いてくれ！！在庫切れだそうだ！追加注文もいただいた！！」


高梨部長は私を抱きしめたまま皆へと報告をした。

恥ずかしいとか、そういう感情も。
何で抱き合ってるのかとか、そういう社員の疑問も。

全て忘れてしまうくらい……。
皆も私も興奮していた。

そこかしこでハグをしたりハイタッチをしたり盛り上がってお祭り状態だ。

騒ぐ声を聞きながらも、私は1人実感が出来ずにいた。

だって……。
こんなに嬉しい事って他にあるだろうか……。

正直に言えば嫌々受けた仕事だった。

難しくて、なかなか進まなくて、今までの作品の中で1番作っていて辛かった。

それにアクシデントが発生したり。
皆がバラバラになったり……。

これでもかってくらいの試練にぶつかった。

それでも……。


「売れた……皆の努力が……伝わった……」


我慢が出来ずに零れた涙が高梨部長の手に落ちた。


「桜木……よく頑張ったな」

「高梨部長……」


優しく涙を拭うと彼は目を細めて綺麗に笑うんだ。


「よかった……これで……社長にも認められますね」

「……ああ、多分もうとっくに2倍なんて過ぎたしな……」

「……はい……」


優しい笑顔に頷き返す。
やっと実感が生まれはじめる。
妙に心が軽くて私も満面な笑みを浮かべた。


「……桜木、ちょっといいか」

「え？」

「シッ。来い」


人差し指を口にかざしながら声を潜める高梨部長。
私はそれに従う様に黙ったまま頷き彼の後を追った。